2011/07/16

あり得ない靴

買ってもリボンやゴムがついていない未完成品で、えらく固くて、足をいれるとキツキツで、ローヒールどころかノーヒール、履いているだけで足元がグ〜ラグラ、ましてやそれでつま先立ちをしようものなら足先が痛くて‥‥

「えーーーーー、こんなんで踊るなんてありえなーーーーいいいいいいい!!!」

オトナからバレエをはじめて、生まれて初めてポアントに足を入れてみた生徒さんが、ついこの間までポアントのレッスンの際に絶叫(ちょっと大げさ)していたひと言。


履いたポアントは必ず干しましょう!
コレ、長持ちの秘訣。
確かにおっしゃる通りです。

足に優しい履きやすい靴が色々と売られている昨今、ポアントは世界で一番履きにくい靴。
未完成品にして一足5000円以上は当たり前。そして場合によっては1ヶ月と持たない耐久性の悪さ。

そんな靴なのに不良品と言われないのは、それが〈ポアント〉という靴だからに他なりません。

〈憧れ〉のポアントに足を入れた途端にその〈憧れ〉はリアルな〈現実〉に変わります。

でも、その“あり得ない靴”で踊るからこそ、観る人に「あぁー、私もいつの日かトウシューズを履きたい」と夢見させるわけです。



「あり得ない!」と絶叫していた生徒さんがつい最近、初めてポアントでパドブレをしました。
怖かったらバーにつかまっていてもいいと言ったのですが、果敢に両手を離してアンオーに。
ゆっくりながらもパドブレ♪ パドブレ♪

そして私にひと言「パドブレ、楽しかったぁ〜」
生まれて初めて味わった“あり得ない靴”の楽しさ。
教える立場の私は「楽しかった」のひと言を聞いて、ホッ。。。。。


よくある質問「靴の中で足はどうなってるの?」
“あり得ない”を“あり得る”にするのはこれまでの稽古で身に付けたバレエのスキル。

このスキルさえあれば、踵がなかろうが、ちょっとくらいキツくて足先が痛かろうが、“あり得ない靴”も“あり得る”わけです。

ちょっとヨチヨチなパドブレで大きく踏み出した第一歩。
これからも“あり得ない靴”を履いてどんどん前進していって欲しいです。

→ポアントの中で足はこうなっています。
 足指はグーにならずに伸びています。
 足首前は最大限にストレッチされた状態。
 ポアントの釘も見えますね。

これで踊るんですからポアントはミラクル!
ポアントを履いていることに誇りを持ちましょう。