2021/05/20

先輩「建ちゃん」逝く


今日は踊りとはまったく関係のない話です。

私は日大の芸術学部で映画を学びましたが、バイト先で一緒だった美術学部の先輩と一緒に「健ちゃん」と呼ばれる同じ美術学科の先輩の家にお邪魔したことがあります。

その「建ちゃん」は描いていた漫画が出版社の目に止まって連載されるようになったとかで、大学に入ったのにあまり学校には来られなくなってしまっていて、だったら「建ちゃんに会いにいこー!」と先輩と一緒にバイト帰りに小さなアパートに会いに押しかけました。
大学生にしてすでにアシスタントを抱えて漫画を描いていて、キッチンにはほとんど食器らしき物はなく、冷蔵庫の中にはペットボトルの水とウーロン茶だけ。
それを突然、やってきた私に出してくれました。



ご本人から頂いた貴重な初版本。
家宝です。
漫画を描く机以外の家具はほとんどなくて、隣の部屋には煎餅布団が一枚。その横に唯一の家具、本棚がひとつ。そこには『ドラえもん』全巻がギッシリ。『ドラえもん』しか並んでいませんでした。
ここは仕事場なんだろうな、と思っていたらここに住んでいると聞いてビックリ。

締め切り前の仕事中。長居はせずに早々にサヨウナラとなったのですが、帰り際に最近出たばかりという漫画本を一冊もらいました。
『ベルセルク』第1巻。
先輩の「建ちゃん」とは漫画家の三浦建太郎さんです。
昨日、訃報を知ってビックリしました。
「自分の頭の中にあるものを生きているうちに出し切れるか分からない」と語っていたそうですが、出し切らないまま『ベルセルク』は永遠の未完になってしまいました。



アパートにお邪魔した当時、まだ19歳だった私は先輩の「建ちゃん」が漫画家デビューしたことは分かっていましたが、その後、こんな世界的な漫画家になるなんてさっぱり分かっていないくて、ご本人から初版本を頂いたというのにサインのひとつもお願いしない、何とも失礼な後輩でした。。。
30年以上が経った今、私はサインを頂かなかったこと、とても後悔しています。

私にとって大学の先輩の「建ちゃん」はベルセルクの画風とは随分と違う、どちらかというと寝床の横にあった『ドラえもん』のように丸くて優しい先輩でした。
きっとまだまだ出せるものがあったはずの天才の死が淋しいです。。。